【赤の少女と白い虎】 15.魂の泣き声 (作・あだちあきこ)


なんてことだ。目の前の道がぷっつりと途切れ、いきなり谷底に投げ落とされたように感じたよ。  

もうおしまいだ。きっとバレたんだ。

わたしの夢はここで終わるのか。

絶望の中で、それでも大きく呼吸をした。 

そのまま、呼吸をつかい、自分の中心意識を真ん中に戻す。いつもと同じように、自分の記憶と感覚を消し去り、師の部屋に向かった。


師はいつものように長椅子に座っていた。

わたしにもその隣に座るように促した。

師は、次の満月の夜に、私を薬師として正式に任命すると告げた。それは一人前として認められただけでなく、ここでの暮らしの終わりを意味するものだった。

「お前は本当によくがんばった」 そしてこうも言われた。

「木や森、草花だけではない。空と大地だけでもない。いまやこの世界のあらゆるものがお前の母として、父として、兄弟姉妹としてそのかたわらに存在しているのがわかるだろう。 わたしはお前を心から誇りに思う。 ただひとつ、あることを除いては」 

わたしは、師に言った。

「それはなんですか?」 

 「お前のありかだ」

たくさんのゆらめくロウソクの炎の下で、師はわたしの顔を見据えた。

「お前のある1点が、霧のようなものに包まれてよく見えぬ。それは自分の行いか? それに気づいているのか?」 

 「・・・自分ではよくわかりません」 

わたしは師の目を正面から見つめ、そう答えた。 

ガンガンと音をたてて、大きな痛みが胸で波打っていた。

「なぜ、そんな風に自分を痛める?  その痛みのまま、話してごらん。

 大丈夫、ここは安全だ。何を話しても大丈夫なのだ、大丈夫なのだよ」


その言葉を聞いた瞬間、とめどなく涙があふれ  止まらなくなってしまった。


〜つづく

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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