【赤の少女と白い虎】 13.欲望のありか (作・あだちあきこ)


その書の中には、龍にまつわる儀式がいくつも書かれていた。 

 龍は知っているだろう?  そう、世界のすべての方向にかかわる力のありかだ。 だから門外不出の禁忌になっているのも知っているな。

その全てがそこにあったんだよ。

なんという不運だろう。笑ってしまうくらいにね。 

 ほの暗い書庫の片隅で、わたしは夢中になって読み進めたのさ。 

すると、紅龍と青龍を腹に呼び込む秘儀が 目の中へまっすぐに飛び込んできた。 それを成したものは、人の巡りを見通すだけでなく、 世界の礎の一部になる、とあった。 その一文に、幼いわたしの心は釘付けになった。 これでもう、人にバカにされないですむ。 世界の礎という存在になれば、師も喜んでくれる。 わたしの世界の色彩は、この時に変わった。 

その日から、心に一筋の希望の光が指したのさ。 そして誰にも言わずに、密かに準備を始めたんだ。 儀式に必要な材料を、根気強く集めたのだよ。

山のいただきに3日間だけ開く、男神の花。 

地中深くから自分の手で掘り出す、星色の水晶。 おっと、材料の話はここまでにしておこう。 

とにかく、儀式に必要なものを手に入れるには、 それはそれは気の遠くなるような時間がかかったのさ。 いつもこっそり夜に抜け出しては見つかって、 炎のように怒られた。 そんな時間でさえ、わたしにとっては希望そのものだった。 望む自分になれるならと、 どんな厳しい仕置きにも耐えられた。  

そんな風に相変わらず、落ちこぼれてはいたのだけれど、 少しずつ変わっていったこともあったんだよ。


〜つづく 

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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