【赤の少女と白い虎】 12.世界の理(ことわり) (作・あだちあきこ)


姫は、じっと祖母の顔を見つめていた。  

ところどころ深く刻まれた皺。 細くつぶらな瞳。 繊細で長い指の、その先。腰までのびた、純銀の髪。 

 「・・・おばあさまはとても、きれいだわ」

全部言い終わってから、しまった! という顔で、姫は自分の口をふさいだ。  

それを見て、谷守りの老婆は  くくく、とおかしそうに笑った。 

 「・・・よい。風読み師は内なるものだ。ここではおばあさまでよい」

姫はホッとした顔で、ふふふ、と笑った。


「おばあさま、龍のはなしって何ですか?」

「聞きたいかい」「はい」 「そうか」  

姫の祖母は、自分のグラスになみなみとぶどう酒を注いだ。


「では、最初から話そう。お前には本当のことを。

これは、世界の理を学び始めたばかりの頃

わたしが犯した罪の話さ」



わたしは生まれてすぐに、ある人の元に預けられてね。 

 そこでは多くの子どもたちが、その師のもとで 世界のありようを学んでは旅立っていった。

 その中でね、わたしは落ちこぼれもいいところだったんだよ。 

 

星とも、風とも、石とも、花とも。 

 鳥ともうまく話せずにいた。とても長くだ。 

 まわりの子がどんどん上達してゆく中で、 自分だけが取り残されていく惨めさをいつも味わっていたんだよ。 2歩も3歩も出遅れ、その差は開くばかりでね。 

まだ幼かったわたしは、人にほめられたくて仕方のない、ただの子どもだったのさ。 


なんとかして師に認められたかった。 仲間に「すごい」と言われたかった。

誰かに自分を見てほしかった。 とにかく、それだけを考えていたんだよ。 

自分は愛されていない。 だから愛されたい。 

そんな夢をみていたんだ。

いまとなっては笑うしかないが。

なんて幼く、なんてまっすぐだったんだろうね。 


 ある日、書庫の掃除を任されていたわたしは、

 棚の裏側で埃まみれになっていた本を見つけたのさ。


〜つづく

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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