風虫の唄 その7(作 鈴音彩子)


ひとりもの かたり部6話目でございます。

今回はシリーズです。その1 ~ その7 まであります。

***

『孤独』


その男は、つくづく嫌になった。

いっそ姿が見えるなら、殺してしまいたいとさえ思った。

風虫の話である。


炎天下の中、都会という砂漠で、

人々が歩く姿をただただ見ていた。

眼の端から端へ過ぎていく人たち。

どこかからやってきて、どこかへ向かい、どこかへ帰る人々。


沢山の人が居たが、

自分や自分と似た人は誰一人として居なかった。


  ふと 風虫の唄を口ずさんだ。


通り過ぎる人々は、突然歌いだした男を不審な目で遠巻きに見ていた。


その中で、

自分の行方はわからないものなんだ、と男は悟った。


立ち上がり、砂漠の中のオアシスを求めていつもの靴で歩き始めた。

足取りは軽やかである。

その男は、今日もどこかの大地の上に居る。

風虫と共に。



(つづきはかぜのみぞしる)


ひとりもの かたり部 鈴音彩子

「風虫の唄‐その7 孤独」2018.7

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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