風虫の唄 その5(作 鈴音彩子)

ひとりもの かたり部5話目でございます。

今回はシリーズです。その1 ~ その7 まであります。

***

『革靴』


「どうしても連絡を取りたい時は、ここへ」

その男が教える場所がある。

とある街の靴屋だ。

その男は半年に一度、そこへ寄る。

靴底を変え、ピカピカにして貰って、風に乗ってふらりと出ていく。

そんな生活を長い間してきた。

特定の家を持たない男にとって

唯一の変わらない場所がそこなのだ。


今日も店の奥の、背の高い椅子に座り、

半年分の郵便に目を通す。

優しい表情で足をぶらぶらさせながら。


その間、マスターは丁寧にブーツの手入れをする。

また半年、しっかり歩ける靴にしておかないと、

シュシュ、シュシュシュシュ・・・・・

磨く音と仕草は、魔法のようである。

シュシュ、シュシュシュシュ・・・・・

シュシュ、シュシュシュシュ・・・・・


店の奥の、背の高い椅子で、

風虫がうたた寝をする穏やかな日である。



(つづきはまたらいしゅう)

ひとりもの かたり部 鈴音彩子

「風虫の唄‐その5 革靴」2018.7

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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