脳みそがスイカになった男の話  (作 田澤 恭平)

本作品は変集部からのお題をもとに各部員が創作したものである。
 ① タイトルを「脳みそがスイカになった男の話」と題して作品を書く。
 ② 作中に、銀行強盗、手紙、カーネルサンダースの言葉を1ないしは2は利用すること。
 ③ 原稿用紙は1〜5枚程度。(400字から2000字まで) 
 ④ 下手でも良いからご自身で絵をつけること。(本作品においては、偏集部からイラストをつけることは一切しない。) 
 ※創作を楽しんでみよう。 

 頭が爆発した。

 視界が真っ赤になったとおもった瞬間、目の前にいた警官が消え、天井が映った。そして暗転。

 甘い香りがする。それと…これは消毒液だろうか。

 ゆっくり目を開ける。蛍光灯が眩しい。LEDが主流になって、明るくなったのは良いが、寝起きには辛い。目を細め、辺りを見回す。管だ。何本ものチューブが身体から生え、何かの機械と繋がっている。

 心音を機械が代わりに出している。低いモーター音もする。

 そっか。生きていたのか。

 安堵した自分に驚いた。自暴自棄になってやったはずだったのに、死を恐れ、生に執着する自分がいた。クソッ! 

「クリストファーさん?」

 ナースのようだ。「先生、先生!」と声を上げながら駆け去っていく。マンガかよ。 

「やあ、お目覚めだね。クリストファー=ロビン。」

 やってきた医師は少し小太りの男だった。長方形のレンズ、銀縁のめがね。ニッと笑った時に見えた金歯。昔は美形だったのだろうが、どこかで間違えてしまった。そんな印象だ。

「私はガストロ=ゲイン博士。ガスと呼んでくれたまえ。言わば私は君の命の恩人ってやつだ。ハハハッ、驚いただろう? あぁ、いい。諸手を挙げて感謝崇拝したいだろうが、今興味あるのは君の身体だ。後で感謝を述べてくれるのは構わない。私は駅前にあるカートルンのケーキが好きだ。それにしても君はラッキーだ。私でなければ助けられなかったぞ。そもそも私のルーツは…」

 長い。煩い。

 話をまとめると、このガストロっておっさんのせいで生き残った。破産して、銀行強盗で警官に射殺されるっつー『クリストファー=ロビン物語』はクソみたいな終わり方を迎えただけで終わらず、更にクソを付け足したって訳だ。

 「今回特徴的なのは、何と言ってもスイカだ。残存していた頭蓋骨に合わせるのであればカットスイカを詰める方が良かったのだが、サラが、あー彼女のことだ。なかなか優秀でね。その優秀さが今回は際立った。何て言ったと思う? 『ガス、スイカは丸ごとの方がお得です』ってさ! すぐに買いに行ったさ! 甘いスイカの見分け方を知っているかね? シマ模様の色とうねりを見るんだよ。ちゃんと甘いのにしてあるから安心したまえ。ここでまたサラの聡明さが輝いたんだ。『甘過ぎると血糖値が常に上がってしまうのではないか?』 確かにスイカ汁が血液の代わりに流れるのだから血糖値が上がってしまう。だがノープロブレム! 血糖値はその内徐々に下がるって話だ! 甘いスイカで問題ないってことを分かってくれたとおもう。それから…」

 煩い。長い。

 というか、スイカ? 頭? 何の話をしているのだ?

 意味が分からず、後頭部を掻いた。

 いつもと違う感触がする。ひと肌や毛髪の手触りではなく、植物の実を触ったような。  無意識に右手の爪を見た。爪の先が緑に染まっていた。

「なんじゃ、こりゃ~~!」

 眼球がぐるりと回り、目の前が緑になった。そして暗転。


 憧れの経営者は誰か。迷うことなく『カーネル・サンダース』と答える。

 なんとかチキンが有名だが、彼がそこに行き付くまでには波乱の人生が待ち受けていた。

 若いころから成功者だった訳ではなく、何度も失敗し、借金を抱えてきたのだ。

 それでも彼は諦めず、やり続け、なんとかチキンを世界中に広めた。

 生前、彼と話す機会があった。憧れの彼を目の前に、自分の不安や愚痴を言った。彼は真面目な顔で、そして同時に微笑を湛えた。

 後日手紙が届いた。そこには一言だけ書かれてた。


 It’ll be fine.(何とかなるよ)


 頭が吹き飛んだ俺は即死だと思われた。しかし奇跡的に心臓が動いていたので、ガストロ博士のところに運び込まれたらしい。

 ガストロ=ゲインは植物医療の第一人者で、現代医療でどうしようもないものを植物の力で治すという。

 スイカは3日に1度取り替えるようだ。激しい運動をした場合、2日で交換もあり得ると言われた。 

 『ロボコップ』のようなものかと訊いたが、あれは機械に人間の脳を埋め込んだのであって、君は生身の身体にスイカなんだから全く違うと怒られた。どちらかというと、アジアにいる、顔が菓子パンで出来ていて交換可能な人に近いと言われた。

 そんなやつがアジアにいるのか?

 疑問に思う間もなく、スイカに関する注意が言い渡された。

 スイカは種無しにすること。なぜならスイカ汁を直接血管に流し込んでいるから、種が血管に詰まると、そこから先が壊死してしまうそうだ。

 「君は種無しじゃないから安心してねー!」

 煩い。突っ込みどころが豊富でどこから手を付けたら良いのだろうか。

 唯一分かったことは、俺の人生は『クリストファー=ロビン物語』ではなく『脳みそがスイカになった男の話』だってことだ。

 脳みそがパンパンになっているところに、いや、スイカがパンパンになっているところにサラが来た。

 血の付いた紙を手渡してきた。

 見覚えのある紙だ。

 紙を受け取りつつ、微笑を浮かべている彼女に合わせて言う。


 It’ll be fine. 


 クソッ! 



からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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