やさしくしてください。


人はだれもが「やさしさ」を求めている。


❇︎


今日は、

「やさしさ」を欲した、

とある人物Mさんについて話そうと思います。


場面はMさんと私がとある高級中華レストランで仕事をしている時のことだ。  


ちなみにMさんは、 そのレストランでフロアマネージャーを務めており、 私はたまにスポットで入るアルバイトである。 


 ✴ 


その日、職場についたわたしがシフト表を確認すると、自分の担当するフロアーのトップがMさんだった。 


ボクは早速Mさんから指示をもらいにゆくことにした。 


Mさんは、 最も奥まった個室で一人、 中華料理特有の回転するラウンドテール(透明なガラス製)を、丹念にそして静かにクロスで吹いていた。 


そこには一種近寄りがたい静謐な時が流れていた。  




僕は早速、 

 「Mさん。今日よろしくお願いします。とりあえず、なにしましょうか?」 

 と質問した。 


 しばし、沈黙。 


 Mさんはそれでもなおラウンドをクロスで拭き続けている。 


 一体、Mさんの心は、どこにあるのか? 


仕方なしにもう一度、 

「Mさん、えっと、自分とりあえず何しましょう?」 

と質問。 


 Mさんはようやく手を止めこちらに振り向いた。 


しばしボクの瞳を見つめ、


 「今日は、やさしくしてください」 


と一言。


ボクは唖然とした。


仕事の現場で、 

「今日はやさしくしてください。」

という指示がくるとは思いも呼ばなかったからである! 


少なくとも、ボクにとっては初めての体験である。


 ✳ 


少し、 この職場に身を置くMさんについて触れよう。 


この職場は、表向きは天下の◯◯◯と謳われお店ではあるが、裏側の職場環境は極端なカースト社会なのである。 性格が腐りきった連中が上層部に蔓り、すぐに心優しい連中を押しつぶしにかかる。 


Mさんは、 信じられないぐらいに純粋な人で、いつも押しつぶされていた。 


仕事に対する姿勢は、 とても真面目で、素直で、 何より人に対する思いやりの塊であった。 


ただ一点、 心が優しすぎる人によく見受けられることだが、ちょっと頭のネジがたまに飛んでいるような時がある。  


悪い人ではないのだが、 不器用でズレているせいで、 その場にうまく馴染めずにいるような人だった。 


ただ、そんな彼Mさんを、 小馬鹿にするものが多くいながらも、 陰ながら彼のひたむきな仕事ぶりを支持するものもいた。  


しかし、 あまりに真面目で熱心であるがゆえに、 当時の上司と度重なる衝突でMさんの心はズタボロの雑巾のようになっていたのである。 


その日は、そんな中での私との邂逅であった。 


 彼は思わず、 耐えきれなくて、 「優しくしてください。」と、漏らしたのであろう。 


 ✳ 


その後、 ボクはお客さんが来るまでMさんの人生相談にのった。 


優しくしてください、 と打ち明けられてボクの心も全開になったのだと思う。  


そこから彼は、 交通事故から一命をとりとめたこと、最近紹介してくれた女性とうまくいっていないこと、上司との葛藤のこと、このレストランの売り上げを伸ばす彼なりの持論などを滔々と語ってくれた。 


特に、この話にオチはないのだが、ボクはあることを一つ発見した。


自分の心の奥の弱いつぶやきは世界と繋がる一発逆転ホームランを撃ち放つときがある。


ボクはそれを彼から学ばさせてもらった。


❇︎


 彼を真似て、僕も世界に向かって呟こう。 



 「やさしくしてください。」 


え。


狙いを持ってやってはダメ!


そうでしたね。


終わりにしたいと思います。


変な人 青剣

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

0コメント

  • 1000 / 1000