完成しない橋の話 (作 せいけん)



私の町には、大小さまざまな運河が流れています。  

私のお父さんは、運河に橋を掛ける仕事をしています。    


ある日、お父さんが私に言いました。  


「橋が出来上がったら、一番最初に渡らせてあげるね。」  


私は、とても嬉しくなりました。  

そのまたある日、私は布団の中でうつらうつらしていました。  


細めに開いたドアから光がもれて、お父さんとお母さんが話している声が聞こえました。 


父 もうすぐ橋が完成するよ。 

母 そうですか。それはおめでとうございます。 

父 うん。ありがとう。  


お父さんの声は『ありがとう』と言っているくせに、どこか沈んでいました。  


母 次の仕事は決まっているのですか? 

父 いや。  


それっきり二人は黙り込んでしまいました。  


私は、頭から布団を被ったまま、目が冴えてしまいました。  

何故、二人は、『おめでとう』と言いつつも悲しそうなのか。  


その後も両親は、橋の完成が近付くとともに、無口になっていきました。  


そして、私は、ふとひらめきました。 


『もし橋が完成しなければ、二人は喜んでくれるのでしょうか?』  


明日には橋が完成するというその日の事です。  


私は、こっそりと、倉庫の奥から一番大きな金槌を引っ張り出して来て、布団の中に隠しました。

そして、夜には、眠ったふりをして、皆が寝静まるのを待ちました。  


真夜中、私は金槌を抱えて家を出ました。  


街は、優しくて、不思議と怖さを感じませんでした。  


そのまま、真っ直ぐ、昼間お父さんが一生懸命に働いている工事現場に向かいました。  

そこには、完成間近の橋が、横たわっていました。  


煉瓦で出来た、とても美しい橋でした。  

私は、橋の真ん中まで進み、立ち止まりました。  


橋の完成を待ち望んでいた私にとっては、とても辛い事でしたが、両親が元気になってくれるかもしれないのなら、試してみるべきだ。 


そう決意を固めて、重たい金槌を頭の上まで振りあげると一気に振り下ろしました。 


『やぁっ!』 


煉瓦は砕け、静かに、こっそりと、崩れてゆきました。 

橋の半分ぐらいは、壊れずに残りました。  


その翌日、両親はなんだか嬉しそうでした。  


夕御飯も、ご馳走でした。  

私も嬉しくなりました。  

両親が嬉しいのなら、橋の完成など、どうでもよくなりました。  


それから毎日、お父さんが昼間に造った橋を、私が夜に壊しに行くことに決めました。    

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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