なきかたを (作 鈴音彩子)

ひとりもの かたり部 4話目でございます。


住宅街を歩いていましたらね、上空からなきごえが聞こえましたの。

「わん」

驚いて見上げましたら、電線の上に真っ黒なカラスがいました。

先を急いでいましたので 気のせい にして歩き始めたらまた

「わん」

となくではありませんか。

新たな言語を獲得したカラスなのか、ナニカを間違えているカラスなのか。

写真を撮りたかったのですが、先を急いでいましたのでね。


住宅地の角を曲がりましたら、犬がおばあさんと一緒にいました。

まぼろしのようなたたずまいが気になりましたが、先を急ぎました。

犬はなきませんでしたよ。

もちろん、おばあさんもなきませんでした。


私が急いだ先には“ようじ”というものがありましてね、

小一時間くらいであれこれ終えまして。

良き方向性ではなかったもので、なきそうになりながら元来た道を歩きました。

なけばいいのに。何をガマンをするのかよくわかりません。

先程の住宅地の角に犬とおばあさんはいませんでした。

電線を見上げてもカラスはいません。

私は歩みを止め、ないてみました。

「わん」

いい大人が何をしているのでしょうね。

自嘲の笑いと共に大粒の涙がこぼれ落ちましたの。

何でしょうね、これは。


ひとりもの かたり部 鈴音彩子

「なきかたを」2018.5

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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