聖書を開くとその中に『りんご』を挟んで閉じた。 【デパーゼ 完】


帰り道、 

「止めて。」
 

と、突然文絵が言った。 


「教会に寄ろ。」
 


来た道を戻る途中に白い教会があった。
 

なぜ寄りたいのかわからぬままブレーキをかけてその教会の前に止まった。
 

文絵は自転車から降りると教会の扉を開けて入っていった。

僕は自転車を近くに止めると彼女を追って中に入った。
 


教会の中には誰もいなかった。
 

多分、みんな昼でも食べているのだろう。
 


文絵は、教会の奥の演台から、僕をこちらへ来るよう手招きした。 


「どうしたの、急に?」
 

と、僕はそこまで歩んだ。 


「ちゃんと見てて。」
 


文絵はジーンズの後ろポケットから八つ折りにされた原稿用紙を取り出した。
 

それは、僕がついこないだ書いた、『りんご』の物語だった。
 


文絵は演台の上に置かれた聖書を開くとその中に『りんご』を挟んで閉じた。
 


神様のサンドイッチだと思った。
 


文絵は、聖書を同じ位置に戻すと僕を見た。 


「あなたが私にお願いした、いつものことよ。」
 


最初からその日、文絵はどこかのタイミングで教会に寄るつもりでいたのだろう。
 


僕はしばらく沈黙した。
 


そして、言った。 


「ありがとう。」と。
 


文絵は微笑み、 

「お腹すいた。ご飯、食べに行きましょう。」
 

と、教会の扉へと歩き出した。
 




僕もそのあとを歩いた。  



【完】



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

0コメント

  • 1000 / 1000