『うさぎ美術館』 【デパーゼ vol.32】 

 

 

 ♈

 


ーある日、うさぎが喋った。

 


公園のトイレの壁の落書きに混じってそう書かれていた。
 


他の周りにある下品な落書きよりもひときわ目を引いた。
 


いったい誰が、何の目的で書いたのか、わからなかった。
 


そこで、二つの仮説を導いた。

 


一つ目。
 

ウサギは孤独で死ぬ、という誰かが作った物語に対して、真正面から抗議するためにその重たい口をいよいよ開いたのだ、と。

 


二つ目。
 

ウサギは孤独で死ぬ、という誰かが作った物語に対して、それを素直に肯定したのち、自らを慰めるためにその口を開いたのだ、と。

 


そのどれもがもっともな事に思えた。
 

しかし、そう説明した途端、物語が完結してしまうことに気づいた。
 

だからその落書きに言葉を付け足すことは控えた。
 


永遠の謎は無数の物語を導いてくれる。

 


あるとき、久ぶりにその公園のトイレに寄った。


役所がトイレをリニューアルしたため落書きが全て消えていた。
 


ちょっとだけ感慨深い気持ちになった。
 

僕はそこでこんな落書きをした。


 




この壁は芸術作品です
 

どうか お手に触れぬよう お願いします
 

また 写真撮影などもお断りします

                



                           うさぎ美術館

 





 



トイレで過ごす人々に少しでも芸術を感じていただければと思って。  



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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