完成しない橋の話 【デパーゼ vol.26】


『完成しない橋の話』

                


                         5年A組 Y・U
 
 


私の町には、大小さまざまな運河が流れています。

私のお父さんは、運河に橋を掛ける仕事をしています。
 
 

ある日、お父さんが私に言いました。
 


「橋が出来上がったら、一番最初に渡らせてあげるね。」
 


私は、とても嬉しくなりました。

 

そのまたある日、私は布団の中でうつらうつらしていました。
 


細めに開いたドアから光がもれて、

お父さんとお母さんが話している声が聞こえました。 


 父 もうすぐ橋が完成するよ。


 母 そうですか。それはおめでとうございます。 


 父 うん。ありがとう。

 


お父さんの声は『ありがとう』と言っているくせに、どこか沈んでいました。
 


母 次の仕事は決まっているのですか? 


父 いや。

 それっきり二人は黙り込んでしまいました。

 


私は、頭から布団を被ったまま、目が冴えてしまいました。
 

何故、二人は、『おめでとう』と言いつつも悲しそうなのか。

 


その後も両親は、橋の完成が近付くとともに、無口になっていきました。

 


そして、私は、ふとひらめきました。 


『もし橋が完成しなければ、二人は喜んでくれるのでしょうか?』

 


明日には橋が完成するというその日の事です。
 


私は、こっそりと、

倉庫の奥から一番大きな金槌を引っ張り出して来て、

布団の中に隠しました。


そして、夜には、眠ったふりをして、皆が寝静まるのを待ちました。

 


真夜中、私は金槌を抱えて家を出ました。
 


街は、優しくて、不思議と怖さを感じませんでした。



そのまま、真っ直ぐ、昼間お父さんが一生懸命に働いている工事現場に向かいました。
 


そこには、完成間近の橋が、横たわっていました。
 


煉瓦で出来た、とても美しい橋でした。

 


私は、橋の真ん中まで進み、立ち止まりました。
 


橋の完成を待ち望んでいた私にとっては、

とても辛い事でしたが、

両親が元気になってくれるかもしれないのなら、試してみるべきだ。 


そう決意を固めて、重たい金槌を頭の上まで振りあげると一気に振り下ろしました。 


『やぁっ!』 


煉瓦は砕け、静かに、こっそりと、崩れてゆきました。 


橋の半分ぐらいは、壊れずに残りました。

 


その翌日、両親はなんだか嬉しそうでした。
 


夕御飯も、ご馳走でした。
 

私も嬉しくなりました。
 


両親が嬉しいのなら、

橋の完成など、

どうでもよくなりました。

 


それから毎日、

お父さんが昼間に造った橋を、

私が夜に壊しに行くことに決めました。   



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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