空を見上げると雨雲 【デパーゼ vol.24】

 

「ピクニックだけど、明後日の土曜日に行こう。」
 


自転車で小学校に向かう途中、文絵が言った。
 


僕は素直に、 

「OK!」
 

と答えた。 


「じゃ、決まりね。」
 


その日、空を見上げると雨雲で一杯だった。
 

なんとなく二人ともどんよりとする気持ちだった。
 

だから、移動中にピクニックの日程を決めることで、少し気持ちが晴れ晴れとした。
 


学校の裏手の坂道に着くと自転車を止めて彼女を下ろす。 


「何もないね。」
 


文絵はグランドを見て言った。
 

グランドに何も描かれていなかったからである。
 


実は、昨日のうちにクジラは消されていた。

僕たちはそれを残念に思った。

ただその代わり、次に何が描かれるのを、楽しみにすることにした。 


「残念。」
 


僕は何となく口にしたが、実は少しほっとした。
 

本当は、クジラの後に別のものが描かれるのが嫌だった。 


「じゃ、行くね。」 

「行ってらっしゃい。」 

「あ。そうそう。」
 


彼女は坂段を下りながら、立ち止まって振り向いた。 


「夕食のリクエスト?」 

「ううん。今晩の物語、楽しみにしているね。」

 「・・・。」
 


文絵は微笑むと踵を返して学校に向かった。
 


一人の女を幸福にする物語、それが今の僕の課題だ。   



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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