永遠の旅人 【デパーゼvol.14】


その夜、

ノートに鉛筆を当てると、

一人の旅人が訪れて去って行った。


その旅人は永遠に世界中を旅している人だった。


だから今もなお彼はどこかを旅しながら暮らしている。

旅人はその土地の言葉が話せるようになるとそこを離れて新たな土地を目指した。


そして新たな土地に着くと、そこの言葉を覚えるため、旅人はその前の土地の言葉を忘れていった。


それを彼は旅を通して繰り返していると語った。


その話を聞いたとき、それは僕だと思った。
 

いつか命が終わりを迎えても、

僕も彼のようにどこかを旅している気がした。
 


なぜなら、少なくとも僕はどこかに留まることはなかったからだ。
 


ようやく得たものを僕は捨てて忘れてきた。
 

忘れることで次に行くことが出来た。
 

そして次に必要とするものを得ていった。
 


眠れぬ夜、僕は一人、布団にもぐって夢想した。
 


今、永遠の旅人はどこの国にいて、

どんな暮らしをして、

どんな言葉を話しているのか、と。
 


それを思うことで、

別の国で暮らす、

もう一人の自分がいるような気がした。   



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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