グランドに描かれたクジラ 【デパーゼvol.6】


僕たちはとある坂道の途中で自転車を止めた。 

 

そこは小学校の裏手にあたり、

グランドと住宅地を抜けてゆく、

坂段の入り口にあたった。


僕たちはいつもそこで別れ、彼女は一人その階段を降りて学校に行く。
 


文絵は自転車から降りると、
「あ。」と、つぶやいた。 

「クジラ。」 

「え?」
 

僕は彼女が見つめる先に目を向けた。
 

その先に学校のグランドがある。
 

なぜか、グランドにはとても大きなクジラが描かれていた。
 


つまり、グランドの土を靴裏でこすったものである。 

「本当だ。子供たちが描いたの?」 

「最近、子供たちの間で、グランドに絵を描くのが流行っているみたい。」 

「ふ〜ん。」
 

僕たちはなぜかしばらくそのクジラをぼんやりと見つめた。
 

今日が始まれば、誰かの手によって消されてしまうか、別の何かに取って変わられることを咄嗟に感じとったためだろう。
 

僕はなぜか、そのクジラが空を飛んでいるように見えた。
 


そう言えば、クジラはよく海面から飛び出して思いっきりジャンプすることがあった。

あれは、クジラが空を飛びたいという気持ちの現れでは、ないだろうか。 

「行くわ。」
 

文絵は、学校に向かった。 

「あ、うん。」 

「じゃね。」
 

僕は自転車のスタンドを蹴り上げながら、 

「晩御飯は何がいい?」
 

と、聞いた。 

「う〜ん。」
 

文絵はしばらく迷ったのち、
「任せる。」と答えた。
 

僕はしばし間を持ってから、 

「OK」 

と、返事した。
 


そして、僕は一人自転車に乗って家に帰った。  



作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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