ちょっと踊れる男の子 【デパーゼvol.2】


からだの中へ梯子を下ろすとそこは夜だった。 

僕はそこを夜の町と読んだ。
 


夜の町は実際に暮らしている町と瓜二つであるが、

そこでは誰もが眠りにつき、外灯が夜の底を明るくするだけだった。


そして、僕だけがその夜の町で一人起きていた。


夜の町で何かモノを書こうとするといつも誰かがやって来る。
 


今も、窓を叩く音がする。
 


僕は鉛筆を置いて屋根裏部屋の窓の外に目を向けた。
 


屋根に一人の少年が立っていた。 


「伝言だよ。」
 


少年の声は夜の町に響いた。 


「伝言?」
 


僕は鸚鵡返した。 


「今度、この町に一人の少女がやってくる。」
 


少年の話は唐突だったが、 

「どうしてわかるんだ?」
 

と、質問した。 


「予感だよ。」 

「ふ〜ん。」 

「その子は、ちょっと不思議な女の子、なんだよ。」 

「どう不思議なの?」 

「どうって言われても困るけどね。」 

「そう。」 

「きっと、その子が来ることで、少し変わるんだ。」 

「何が?」 

「何かはわからないけど、変わるんだよ。」
 


僕はしばらくして妙に納得した。 


「じゃ、伝えたから。」 


 少年はその場から離れようとした。 


「あ、あ、ちょっと待って。」 

「何?」 

「君、名前は?」

 「名前かぁ。」 

「なんて呼んだらいい?」 

「う〜ん。そうだね。」
 


少年は突然、屋根の上でステップを踏み出した。

それはとても軽やかで小粋な動きだった。

多分、そのステップは世界を恐れていない者だけが踏める天性のものだろう。


僕もその昔、そんな風に踊れたような気がする。 


「ちょっと、踊れる、男の子。で、いいんじゃない?」
 


少年はそう言うとさらに踊った。
 


よく見ると、少年の足は屋根から食パン一枚分も、浮かんでいた。
 


やがて、少年は宇宙飛行士のように夜空に浮かんで、消えた。   





作 青剣

絵 ヤマネコトリコ


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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