シャケェ〜になったイクラの話 (作 せいけん)


ある日、

一粒のイクラが思った。  



私は鮭の卵として生まれ、 

卵のまま人に食われて、 

マイライフを終えるのかと。 


それを思うと、 

なんだか、 

とても悲しくなった。 


なんとか、 

生まれかわることは、 

出来ないものかと願った。 


せめて、 

自分も鮭になって、 

いつかは下流から上流へと泳ぎきりたい。 


そして、 

自分も自分の分身である、 

イクラを産卵したいと思った。 


が、 

そう思った一粒のイクラは、 

すでにとあるお寿司屋さんのネタとして卸されていた。  


冷蔵された、 

いくつものネタに紛れたイクラは、 

自分の気持ちとは裏腹にその出番の到来を待つだけにそこにいた。 


 「イクラ一つ」 


 その時。 


 カウンターから、業界人風の男が、イクラ巻を注文した。  


板前は「いくら一丁」と声高に答えて、

シャリに海苔をまき、

イクラをその上にまぶした。


その中に、かの一粒のイクラが混じっていた。 


カウンターに差し出されるイクラ巻き。 


注文した男が、

そのイクラ巻きを口にしようとした、

瞬間だった。 


その一粒のイクラは、 

人に食われる運命から逃れようと、 

ジャンプしてカウンターの上に不時着陸した。 


 人には聞こえない程度の、 

「ペチャリ」という小さな音をたてて、 

 そのイクラはその場でうす皮を破ってはじけた。 


 イクラの命が間も無く消える頃、 


 「ねぇ。ママ〜。あれ、なに〜」 と、カウンターにはじけたイクラを小さな子供が指差した。 


 「あれはねぇ。しゃけのたまごよ〜」 


 小さな子供は、 「シャケェ〜!?」 と、首を傾げた。  


そのイクラは、 

命の灯火を消した時、  

その子供が呟いた「シャケェ〜」という言葉になった。 


 つまり、

「シャケェ〜」に、

生まれ代わったのである。 



「シャケェ〜」という響きが、 

自分を別の世界へと、連れていってくれると感じたに違いない。




 昔々、今は今。 


                                  作 せいけん       

からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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