神様の樹 10 (作 青剣)


学校から家まで歩くことにした。  

通学路を歩きながら誰もいない路地裏でカズが現れた日のことを思いだす。


しかしそれも、

中学一年生の夏休みを迎えるまでの、

あいだだだった。  


イチはあの頃、少しずつ、カズを忘れ始めていた。  


イチが中学一年生になったある日曜日の夕暮れ。  


離れの居間で漫画を読んでいたときに、 

「姉さん、学校、楽しい?」と、

カズが聞いてきた。  


イチはその真意を計ることなく、 

「うん。楽しいよ。」と、

素直に答えた。 


「そっかぁ・・。」  


入学当初は、

周りに馴染めるかが不安でいたが、

少しずつ仲の良い友達が出来てきた。  


だから、彼女たちのことが少しずつイチの心を占めていった。  


その後、 

「ねぇねぇ。」と、

庭で手持ち無沙汰に過ごしていたカズがまた、声をかけてきた。 


「うぅん?」 

「森にいこうよ・・・。」




 イチは、 

「今日はいいよ。」とさらりと答え、

そのまま漫画を読み続けた。  


イチは最近、

森で過ごす時間が減ったことをあまり自覚していなかった。  


しばらくして・・・。 


「じゃ、ボク一人でいってくる。」  

 と、カズは言った。  


イチは漫画から目を離して、 

「気をつけてね。」  と、

答える頃にはカズはいなかった。  


何度、「気をつけてね。」と、見送っただろうか。  


イチが歩いて帰ろうとするのも、

誰もいない道の片隅に、

カズの面影を求めていたからである。


イチの心持ちは少しずつカズと過ごした日に溯ろうとしていた。   




作  せいけん

絵  鈴吉


からだ部

からだ部とは、「からだを感じる」をコンセプトに、部員たちがモノをつくり発信する部活道である。 主な活動は、 1)メディア 2)ワークショップ 3)企画 の三つになります。

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